国は自転車の活用を総合的・計画的に推進しており、2016年に成立した「自転車活用推進法」に基づき、日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングロードを「ナショナルサイクルルート」として指定する制度を創設しました。
今回は、そんなナショナルサイクルルートの概要と国指定のサイクリングコースを詳しく解説していきます。
ナショナルサイクルルートとは?
ナショナルサイクルルートとは、一定の水準を満し、国が指定したサイクルルートのことです。
自転車活用推進法に基づき、自転車を通じて優れた観光資源を有機的に連携するサイクルツーリズムの推進により、自転車活用推進本部において、令和元年9月9日にナショナルサイクルルート制度を創設。
日本における新たな観光価値を創造し、地域の創生を図るため、日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルートとして国内外にPRを行い、サイクルツーリズムを強力に推進していくことを目的としています。
▼ナショナルサイクルルートYouTube公式動画
ナショナルサイクルルートの指定要件
ナショナルサイクルルートでは、「ルート設定」、「走行環境」、「受入環境」、「情報発信」、「取組体制」の5つの観点から指定要件を設定しています。
ナショナルサイクルルートの代表的な指定要件として以下の項目があげられます。(一例)
- ルートの延長が概ね100km以上であること(島しょ部を除く)
- 鉄道駅などに、レンタサイクルや着替え場所等が整備されていること
- サイクルステーションがルート上に概ね20kmごとに整備されていること
- ルート直近にサイクリスト向けの宿泊施設が概ね60kmごとにあること
さらには、以下のような経路などの路面表示、案内看板が設置されていることも指定要件のうちのひとつです。
▶さらに詳しいナショナルサイクルルートの指定要件についてはこちら
6つのナショナルサイクルルート
現在、国によって6つのナショナルサイクルルートが指定されています。
第1次ナショナルサイクルルートでは以下の3つのルートが指定されました。
- つくば霞ヶ浦りんりんロード(茨城県)、延長:176km
- ビワイチ(滋賀県)、延長:193km
- しまなみ海道サイクリングロード(広島県、愛媛県)、延長:70km
続いて、第2次ナショナルサイクルルートでは以下の3つのルートが指定されました。
- トカプチ400(北海道)、延長:403㎞
- 太平洋岸自転車道、延長:1,487㎞
- 富山湾岸サイクリングコース(富山)、延長:102㎞
ナショナルサイクルルート|国指定の6ルート概要
トカプチ400
トカプチ400とは、北海道東部に広がる十勝平野をJR帯広駅を起終点とし、8の字に周遊する総延長約400kmのサイクルルートです。
コースには十勝地方で指定されている3か所の日本風景街道(シーニックバイウェイ)が含まれ、日高山脈と十勝平野の大パノラマを眺めながらのサイクリングが楽しめます。
富山湾岸サイクリングコース
富山湾岸サイクリングコースとは、氷見市脇(石川県境)~朝日町境(新潟県境)までの延長102㎞に及ぶ湾岸沿いに整備されたサイクリングコースです。
最大高低差は約35mと勾配が少なく、想定所要時間は8.5時間ほど。富山湾の美しい景色を眺めながらサイクリングが楽しめる眺望のよいコースで、「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟している富山湾の魅力を体感することができます。
太平洋岸自転車道
太平洋岸自転車道とは、千葉県銚子を起点、和歌山県和歌山市を終点とする延長1,400kmの大規模なサイクリングロードです。
千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県の各太平洋岸を走るこの沿線には世界遺産である富士山をはじめ、日本を代表する観光地・景勝地が多数存在するルートとなっています。
つくば霞ヶ浦りんりんロード
「つくば霞ヶ浦りんりんロード(上地図の緑ルート)」は、自転車道として設置されていた「つくばりんりんロード(40km)」と「霞ヶ浦湖岸道路(140km)」を結ぶ、全長約180kmのサイクリングロードです。
平野部に位置するため、大部分がフラットな、サイクリング初心者にも走りやすいルートで、霞ヶ浦などの水郷地域や筑波山地域などの豊かな自然や風景、鹿島神宮に代表される歴史的・文化的資産など様々な地域の魅力が楽しめます。
しまなみ海道サイクリングロード
しまなみ海道サイクリングロードは、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ、日本初の海峡を横断する70 kmのサイクリングルートです。
その区間には大きな島が6つあり、瀬戸内海の島々が織りなす絶景を楽しめるほか、それぞれに形の異なった架橋で結んでいることから「橋の美術館」とも呼ばれています。
また、米CNNでは「世界で最もすばらしい7大サイクリングコース」にも選出され、国内だけでなく海外のサイクリストたちからも注目を浴びています。
ビワイチ
ビワイチは、日本最大の湖「琵琶湖」を反時計回りに一周する約200kmのサイクリングコースです。
高低差が少なく、サイクリング初心者でも走りやすいのが特徴で、広い空の下、広大で輝く湖面を見つめながら爽快なサイクリングが楽しめます。
観光では比叡山の麓に栄えた里坊や日吉大社の門前町、織田信長が築いた安土城跡や彦根城跡の特別史跡、東海道の草津宿や守山宿、中山道の醒井宿、北国脇往還の木之本宿などをはじめとした宿場町など見どころは満載。
琵琶湖の東側を走る近江鉄道では、電車内に自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」が利用可能で、始発終着駅の米原駅のサイクルステーションで自転車をレンタルして、周辺の観光名所を楽しむことができます。
ナショナルサイクルルート|まとめ
現在指定されているナショナルサイクルルートは、国と連携してさらなる環境整備やPR活動が行われ、多くの方に認知されるとともに、自転車の活用推進を目指しています。
このほかにも、サイクルツーリズムの推進のため、各地にサイクリングモデルコースが設定され、先進的なサイクリング環境の整備が進められています。
各地のサイクリングモデルコースについてはこちらをご覧ください。